フューリー

粗筋
大戦末期のドイツ。タイピング技術を学んだ米軍新兵が配置されたのは戦車の銃座の前だった。死の責任と生の儚さ。戦場を目の当たりにした彼の精神は揺さぶされ、一人前の兵士へと成長を遂げる。300の精鋭SSを前にして、半壊の戦車「フューリー」と小隊員5人の結末や如何に。

感想
戦争映画としては近年最高の出来。ゆえに背水の陣を敷いてからの展開に違和感。
飛び散った「前任者」の肉片拾いに始まり、少年兵を逃したことから味方に犠牲を出したこと、戦場には不釣り合いな可憐な少女(音楽という「気品、教養を感じさせるものまで添えて!)との甘い情交と別離、最新鋭の敵戦車を落とすのにフューリー以外の自軍戦車が破壊されたこと。そこにはあっけないまでの死が存在していた。であるにも関わらず足を潰された戦車一基で「善戦」する姿は、聊か空寒さを覚える。まだ先に戦場入りした時の利を生かした策に相手を陥れるなどして描写があれば良かったのだが。

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インターステラ―

粗筋
穀物は病葉に縮こまり、天地はかつえ塵埃が降り積もる。地球が終わらんとしていた。元宇宙飛行士の農夫クーパーは、異常現象が発端で再び宇宙への道を歩み出す。最愛の娘を残し彼が目指すは第2の地球。だがその旅路は余りに壮烈なものだった。

感想
懐かしい、まだ誰も知らない宇宙旅行へようこそ。今年最高の映画。

 序盤に展開されるのはSFお決まりの「地球がやばい」。だが、ノーラン監督の異常なまでの映像の拘りが、そこに現出された世界に現実感を与える(トウモロコシ畑を実際に作ったり、送風機で現実の砂嵐を発生させただとか.)。
 文明が衰退した世界では、宇宙船も「最新鋭」のものとは呼び難い。シャトルからステーションに移った際に見るのは薄汚れた船内。アンドロイドの不恰好な移動、ディスプレイに映し出される文字列の表現も、どこかノスタルジアを起こさせる。
 「彼ら(them)」の作り出したワームホールを抜けた先で、めぼしい探索先を議論する乗組員一同。そこここにSF用語が散乱する様も、一昔前の翻訳小説を読んでいるようで懐かしい。何時から、SFは映像だけのものになっていたのだろうか。
 山脈のような海。凍りつく空。事象の地平線。ノーラン監督は着想だけで満足しなかった。学者とアーティストを繋ぎ、科学考証に基づいた世界を作り上げた。その先でクーパーは、3次元の世界の先を見る。今まで提示されてきた謎が伏線として回収され、暗く閉ざされる筈だった未来が、新たに創造される。
 旅路へ向かう時のたった一つの望みを果たしたクーパー。しかし彼は次元を超える「愛」に突き動かされ、もう一度空へと飛び立つ。娘と彼女以外の女性を排した構成だからこそ、観客にも自然と受け入れられるのだろう。孤独の星へ降り立った彼女の元へ。かつて命を捨ててまで守ろうとし、いまわの際でも幻視した彼女の元へと。

古典派理論SFアーンド美麗グラフィック!!見よう!(結論)

コメント

風見
2014年12月4日9:19

インターステラ―
アメリカ宇宙映画にありがちな「愛してる爆発」オチだったらどうしようかとおもって
敬遠してたけどけっこうおもしろそうですね、土曜のブードラの前にでも見に行こうかな。
山脈のような海とか凄そう!そんなグラフィックで狂気の山脈にてを映像化すれば・・・トトロ・・デル・トロ・・うっ頭が

tyler
2014年12月4日11:08

『フューリー』は曳光弾使ってたりディティールすごそうにみえるけど、やっぱちょっとヒット路線狙っている感が見えるときあるよね。それでも十分イイ出来って思うけど。
ノーランはやはりすごいね、これもほとんどフィルム撮影だし、相変わらずロボットという言葉を使いたがらずArticulated Machineなんていうし変わり物だけど。テレンス・マリックを神と思っている人だから、次回作あたりではセリフがなくなってしまいそうだけど、それでも彼なら見れてしまう作品を作りそうだね。この調子で終わりなき戦いはノーランに頼みたい

nzm
2014年12月5日17:56

インターステラーはみるまいかなーとおもってたけど、ツイッターのヒョロワーの評判が良すぎて

マイコロス
2014年12月8日16:53

>風
狂気山脈…いつ完成するんだ…

>t兄貴
ノーランは化けモンやでえ

>n
良い映画ですよ!見ましょう!

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