粗筋

 ニューヨークの巡査部長、サーチには「勘」があった。凶悪な事件、特異な事件に「レーダー」のようなものが働くのである。妻を殴る退役兵。異音の絶えない民家。子を殺そうとした母親。一見共通項のない事件の間に彼は繋がりを見つけ、捜査を進めていく。彼自身の能力に潜む危険に未だ気づかないまま…。

感想

 うーんなかなかに正統派のホラー。清く!正しく!キリスト教を布教するためのホラー!
 ただタイトルはいけないなあ。(映画の)原題はdeliver us from evil。主の祈りの一節、「われらを悪より救い出したまえ」なんだが、この邦訳だとまるで「霊能力で霊の声を聴く!彼等の訴えから本来なら絶対特定できない犯人を知る!」って話かと思うよねえ。心霊探偵八雲のような。しかし、今作カトリック大好きなテーマである「かつて神を見限った男が、再び信仰に目覚める」という話なのだから、少なくとも宗教性をタイトルに含めねば。
 ただしかし、全く同じ原題で、神父と小児性愛問題を描いた作品が06年に出ているのだから、「フロムイーブル」という単語を邦訳に入れてはいけない、というのもきつい縛りなのも事実。もうさ、原作本のタイトル「beware the night」をカタカナにしてさ、終わりで良いんじゃない?(棒読み)

 映画自体の感想ですが、かなりホラー色、特にグロさを前面に押し出した作品とも云えるでしょう。近年の「悪魔系」映画の主流はやはりPOV。パラノーマルアクティビティやグレイブエンカウンターズのようなね。その中でエクシソシストもの、も「画面の制約」上、表現をグロテスクにするよりも、分かりやすい「超常さ」を表現する方向にシフトしてきたとも言えます。
 ではわかりやすい超常さとは?それは悪魔お得意の「心を読む」(今作では「clairvoyance」という単語で表現)能力です。人の心の弱みに付け込むのです。それがPOV系のエクソシスト映画、「デビルインサイド」「ラストエクソシズム」「ポゼッション」では表現されています。
 が、今作では敢えて「グロ」さに特化することで、「エクソシスト」への原点回帰を諮っています。恐らくなのですが、主人公のサーチの「心の不安定さ」を観客に共有してもらう際に、「霊能力に由来するビジョン」を多用してはいけない(今作は「霊能力は『音』での表現を大事にしているため)から、代わりに現実のゴア表現で見るものの心を揺さぶろう、という魂胆なのでしょう。

ハラハラドキドキ、最後には神様が勝つ!よし皆でカトリックに入ろう!(雑締め)

コメント

tyler
2014年9月24日10:45

観たのが昔すぎて覚えてない……が、しかし、主人公の心境とこちらの心境が同調していく構造なのはうまいですよね。心霊モノはそんなものを考えずに、どんどん現象のみを描写する作品が多く、置いてけぼりになること多いですから。デリクソンさんの『フッテージ』も恐かったし、この監督はなかなかいいですよな。ちなみに作品コンセプトは『エクソシスト』+『セルピコ』だそうですよ。本作は10年くらい前に企画されたものなので、よく今更掘り返したなと思いますわ

MTGAnglerfish.アンコウ
2014年9月29日13:53

誤って投稿してしまい、編集中に他のことやらざる負えなくなり…
書いていた内容が吹き飛んだ+そのことを忘れていた
という…

マイコロス
2014年10月1日3:39

>た

現象一辺倒なのってやっぱり呪怨以後の幽霊のモンスター化が原因なんでしょうかねえ。

>し
咎めとかじゃないんだけど、コメントついた自分の記事にじゃなくてわざわざこっちにコメ返は別にしなくていいんじゃないかなあ。今回のは記事消しだからアレだけど。

tyler
2014年10月1日10:56

映像技術あがったせいでやれることが増えたせいで、モンスター霊がでてきて、安易にビビラせることができたから流行っちまったんでしょうなあ。現象ごりおしされても感情移入しにくいだけなんですよねえ。霊も一度みえてしまえば、もうそれ単体で恐いわけではないですからね。信じない、られない⇒信じるしかないみたいに心境の変化をどれだけ丁寧に描くかなんですけどね重要なのは。それがわかってる監督といない監督で作品の質が変わりますな。

マイコロス
2014年10月3日8:21

心境の変化を描かなくても良くなったことが、モンスター霊=超常存在の非宗教化につながったのかなー、とぼんやり思った。

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