粗筋

近未来。「センチネル」と呼ばれる殺戮兵器の登場によってミュータントはおろか人類という種が存続の危機に瀕していた。過去に精神を送る能力を持つミュータントの御蔭で辛くも全滅を逃れていたXメンたちが中国で集結し、センチネル開発の発端となったミスティークによる科学者暗殺を阻止する計画を立てる。ミスティークが暗殺をした際に捕まり、その能力を解析されたことがセンチネルの完成に至ったからである。
前述したミュータントの能力を使えば、確かにその50年前まで精神を戻すことはできる。しかしその時間旅行は精神に過負荷をかけてしまうため、驚異的な治癒力を持つウルヴァリンしか耐えられないのは明白だった。彼は73年に戻り、プロフェッサー、マグニート、ビーストを結束させ、「未来を守るための、過去改変」へと挑む。

感想

 大変すばらしい!!Xメン史上最高の映画じゃないかな!というかマーベルの映画の中で一番好きかもしれない。
 先ず作品の構成。実質的にはパラレル扱いの作品ながら、過去作へのリンクが随所にある。しかもそれが単なる追憶ではなく、改変をするという作品の根幹を揺るがす創造行為であるのだ(ぶっちゃけ駄作のfinal decisionを作品への昇華を伴いながら「なかったことにしてる」のも痛快だが)。
 物語の設定としては、「ターミネーター+X-men first class」と言えば分かりやすいだろうか。原作自体は81年だが、映像としてかなりの部分がターミネーター2を意識しているのは明白だろう(冒頭の未来のセンチネルは、その登場シーンと言い名前といい、マトリックスを思わせる節もあるが)。過去編では好評だった「ファーストジェネレーション」より数年後。主要人物はそのままに、新たな物語が展開していく。
 もう一つこの映画を良きものたらしめている点として、「未来をより良きものにするために、確固たる決意を持ち、行動をすること」を全面に押し出しているところだろうか。アメコミはこういうテーゼが好きなジャンルだが(スパイダーマンの「大いなる力には大いなる責任が伴う」しかり)、この作品はその作品内容や演出の巧みさも相まって、その思想をシンプルに、そして力強く観客に投射できているように感じる。
 X-menというシリーズとしての極北であり、同時に普遍性も持ち合わせた今作、是非見て欲しい一作である。


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Xメン新作と若干関係ある話でもあるが、「喪失」感について、最近ホットな作品への言及踏まえ考察。
人間は人生の中で喪失を経験する。何を喪失に含めるかで大きく変わるが、私の思う喪失とは「回復出来ない、不可逆の状態」であると思う。ここでは精神的な喪失は考えず、物理的な喪失(特に怪我)と、究極的な喪失である「死」を扱うこととする。
怪我を例に取ろう。人類の習わしなのかもしれないが、ライトノベル、少年漫画などの少年向け文化においても、暴力がそこら中にあふれており、「怪我」の表現はいたるところにみられる。怪我における「喪失感」では、私は「身体が『欠ける』こと」こそ読み手に深い喪失感を与えるものだと考える。2つ具体例を挙げよう。

A:大刀で背中を袈裟懸けに切られる。傷口が斜めに出来て、血が溢れる
B:小指の先を食いちぎられる。断面は肉が引き攣れ、骨が覗く

どちらが不快感が大きいだろうか。怪我の度合いで言えば間違いなく前者だが、不快感で言えば後者を指す人が多いのではないだろうか。なんとなく私たちは、「欠損しない傷は治る」というような「文化的刷り込み」をされていると思う(普通に考えれば刀で切られれば人は死ぬが、作品鑑賞においてそうは思っていない)。
同じことは死についても言えるだろう。死も世界にはありふれているが「一人物の死」は一度しかありえない。それ故に、その死がもたらす喪失というのは大きい。作品鑑賞において一番大きな喪失感をもたらす死は、主人公の死だろう。主人公は物語の中心であり、彼の死で物語は終わりを告げるのだから。

それ故に喪失は不快感と共に大きな衝撃を読み手に与えるものであることからして、作品創作において重要なことは明白だろう。が、敢えてそれを逆手に取った作品を最近見るようになってきたと感じる。その例として挙げるのが、標記にもある2作品だ。

ワールドトリガーはジャンプで連載している漫画である。この漫画の設定で、戦闘する少年少女たちは「トリオン」というものを見に着ける。そのトリオンなる物質で身体が構成された状態で戦う彼らは、戦闘の中で多く傷ついて行く。血は黒いガスが噴出するように描かれ、手や足が具体的に欠損した状態になっても、彼らは痛みを感じずに戦うのだ。この漫画のグロテスクなところはその痛みのなさだろう。コミックス1巻において、主人公は戦闘の中で片腕を失う。それは前述のトリオンで構成されており、腕を失くしたことにショックも受けないのだ。そして極め付けがベイルアウト(トリオンを一定量以上なくすと戦闘から強制排除される)だろうか。ここでは戦闘での死も存在しない。まあぶっちゃけこの漫画あまり面白くないのだが、戦闘の描き方は一線を画しているように思う。
続いてAll~。これはSFに良くあるループもので、別にこの作品に特筆する意味もない(挙げたのも映画化されるからだけだし)。要は一個人の死を何度も再演できるということ。

Xメン新作はその辺り、これまでの作品より言ってしまえばグロく描いていた。首がもぎ取られたり、熱線を浴びせられ続けて身体に穴が開いて溶解したり。「未来改変」というガジェットによって、「この過去はなかったことになる」ことから、その喪失は状態としては回復されるのだが、観客が味わう喪失「感」も差し引き0になるわけではない。その差分を印象として残せるのが、監督の技量なのだなあ、と思う。(強引な結論づけ)

コメント

arikaora
arikaora
2014年6月8日20:12

話聞いてるだけでも面白いです。これはまだ見てないので是非視聴すべきですね。

凡骨
2014年6月9日21:26

喪失感の残留が観客側にも残るから最後のプロフェッサーとローガンのシーンもスムーズに感情移入出来るよね。

マイコロス
2014年6月10日8:41

>上
見るんご!
リンク返しました

>下
死がショッキングなものだからこそ、センチネルの熱線がスローモーションで襲い掛かって主人公たちに接触する直前にふっつりと消えて誰もいなくなり、人跡絶えて久しい廃墟の情景になるシーンで深い感動があるんやなあ、って…。

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