粗筋

19世紀前半、自由黒人として生きていたノーサップは、ある日突然拉致され奴隷として働かされることとなった。彼は劣悪な環境の中でもめげず、生き残るために絶望することなく日々を生きるのだが、それは余りに過酷な人生だった。

感想
ふつう…?これアカデミー賞作品賞取るほどか…?
先ずタイトル。はーいこのタイトルつけた馬鹿は腹切れ。これ、その人が実際に出版した本のタイトルなんだろ?何でここまで改悪するんだ?ヘミングウェイ好きなの?ん?

肝心の映画の内容だが…。普通だ。
他の黒人問題、奴隷問題を扱った作品から際立つものは何も感じられない。
それに個人的にどうかと思ったのが、ブラピの登場と、主人公ソロモンの描き方について。
ブラピは作品後半に突然登場し、奴隷は家畜として扱うのが(南部では)当然の時代に彼らは同じ人間だ、このようなことをする人間はどうかしている、と先進的なことを語る。そしてソロモンが自由黒人であることの証明の手助けを確約する。唐突過ぎる登場と、余りに高潔すぎる描き方に違和感がある。せめて奴隷解放論者の存在の表現に幅を割くことは出来なかったのか。
そしてもう一つがソロモンの描き方。確かに彼が過酷な人生を歩んだのは分かる。だが、その「過酷」さが身に沁みてくるほどではない。鞭うたれた背中、は表現されるにせよ、もっと「辛さ」を肉体的なものとして表現して欲しかった。例えばあかぎれした指であるとか、汚れくすんだ肌地であるとか、辛い労働で背中が縮こまるとか、頭髪が薄くなるとか、深いしわが刻まれるとか。12年も奴隷だったのだろう?ならば、それ相応の肉体的変化がある筈なのではないか。そういうものが見えてこない。働き盛りの30代で連れ去られ、戻ったら孫も居る年だった、という「壮年期の喪失感」が一向に見えてこないのだ。年月の重みが感じられない。

そしてこれは映画への分析、批評ではないのだが、個人的にソロモン自身の「感情」ではなく「行動」が見える作りだったらよかったと思った。例えば史実に忠実ではなくなるかもしれないが、彼の「行動」が彼の運命を救うように描くとか、又はそういった行動すら許されない程、奴隷制という制度が個を潰す強大な悪法だったのだったら、それから解放されて、「黒人奴隷」ではなく「自由市民」としての彼の行動を描くであるとか。ソロモンノーサップは自由市民としての権利を取り戻した後のことは明らかではないらしいのだが、映画のエンドクレジットにもあるとおり、underground railroad運動に参画したともある。例えば、そこでstationとstationを結ぶconductorを務める彼の姿を最後に映すであるとか…。何がしか、この奴隷生活が彼から全てを奪いさったのではなく、何かを彼に与えた、そういう表現が一粒さえあって欲しかったと思うのは、傲慢だろうか。

はい。普通です。金払う価値はまあ、あるんじゃないでしょうか。

コメント

tyler
2014年3月10日10:27

アカデミー賞は、映画の製作者が多く会員にいる関係上、作品としての質だけが評価されるというよりは、制作過程なども考慮されるんですね。映画に関わった人々同士の打ち上げみたいな感じなわけです。また、日本よりも大分大きいマーケットであるがゆえに、世論への影響も少なくなく社会性を帯びた作品が入賞しやすいのです。今年はアメリカンハッスル、ゼログラビティ、本作での対決となってたわけですが、アメリカンは前年度アルゴと作風が被りますし、ゼログラは製作側ほとんど受賞だし、SF。そんなわけもあって作品賞を本作にあげたんだと思います。あと、私もそこまで本作がよりとは思わないのですが、テーマゆえになんとなく叩きづらいというかそういう世論がむこうにはあるのかなと思います。ただ、監督S・マックイーンさんはいい腕の持ち主だとは思います。『シェイム』『ハンガー』の方が彼の作品としては良質でしょうね。長くなってすみません

マイコロス
2014年3月10日22:19

あー、確かにアカデミー賞は社会問題や歴史を盛り込んだ作品が受賞する、とは聴きますね。あと映画文化の昂進に貢献した作品が受賞するとかも耳にします。

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