ここに一冊の本がある。

「英文解釈考 佐々木高政 著」

英語フリークならいつかはたどり着く書だと言われている。知人(もっちー)から頂き読んでいるのだが、読み辛い。それも大変に読み辛い。同じ日本人が書いた本なのかを疑いたくなる。

英文が先ず最初にあり、その次に解説が載っている。だがその解説は非常に冗長であり、且つその日本語の解説の中に唐突に英文中の単語の解説がぶっこまれてる。しかもまるっきりOxford English Dictionaryの英英をまるっきり入れたような解説で、平気で2~3行続く。正直多少の誤謬はあってもいいから邦訳を1語で表しておいてほしい。そしてその解説の後にようやく訳が入る。これは非常に見辛い。意識が文章の一所に集まらないから、漫然としたイメージのみが推移していくために、文章全体の意味がくっきり見えてこないのである。

しかも、文章の格調が高いせいで更に難しい!辞書引かないと分からない(というか下手したら英和辞典では意味を十全に掴み切れるか分からないレベルの単語まで…)単語が複数個出てきて、挿入句、倒置、長い引用、ロングダッシュ、セミコロンコロンまでふんだんに使った文章が例文として使われている。とどめに文章の内容は多分に抽象的である。これもう分かんねえな(諦め)

更に言うと、章の中での節組みが画一化されていない。「『省略』はまどろっこしさを解消し、更に二物を文章中に近接させることで対称を強調する効果がある」ということを言いたいのに
例示1(例文→解説、解説内で「省略はまどろっこしさを解消する」
例示2(例文→解説、解説内で「近接させることで対称強調」
と例文至上主義なのか、常に例文を一個置いてはそこの効果を一つ上げる、というような書き方がされている。これでは「勉強」にならないではないか。

戦前に英語教育を筑波大学(の前身)にて受けていたため、間違いなくこの人は頭は良いのだろう。が、タイトルにもつけたとおり、この人には表現する力や教える力が有ったかと言われると違う問題であるかのように思う(お前の理解力が足りないって?じゃあお前「英文解釈考」を読み易い良い本だなんて胸を張って言えるか?)



考える力
これはもういわゆる「頭良い」である。

表現力
これは自分が何かを考察または観賞している際に考えること、感じることを的確に表現できるか否かである。それはその感覚を表現するために多少は詳細さは必要にせよ、無駄に冗長になってもいけない。
現代日本語で最も便利な言葉の一つに「やばい」がある。やばい。ものの程度がはなはだしい際に使う語だ。英語で云えばundulyだろうか。しかしこの語には、その甚だしさの中にある種の感情が含まれている。その甚だしさに心を動かされていることが条件であり、しかも多少のプラスイメージを持っている。更に言えば、「甚だしさ」も範囲を幅広くカバーできるのが「やばい」という語の強みだ。お、すげえ程度でも良いし、スーバーメガトンオメガ凄い場合にも「やばい」が使える。
なので日々の会話、ネットや携帯上での書き込みの際にもついつい使ってしまう語だが、その便利さゆえに自分が何に感動しているのかを正確に表現できているとは言い難い。
「このブラウニーやべえわ」

「やっぱりアリスが作るブラウニーはうまいな。生地がしっとりしていて、それでいてベタつかないスッキリした甘さだ。ココアはバンホーテンの物を使用したのかな?(棒読み)」
では後者の方がブラウニーの美味しさをより上手く表現できているように思う。

教える力
これが最終段階であり、教える力のある書が100年、1000年に渡り受け継がれる本であるように思う。字面の世界を超え、作者の思想が意志を持っているかのように読者に働きかけて、読み手に本には書かれていない思考の実践をさせて、最終的には価値観すら変質させてしまう。そういうのが教える力であるように思う。教えるためには内容がないといけない。ただ、同時に「万人にとって読み易い」ことも重要なファクターであると思う。
岩波文庫の有名な「読書子に寄す」でもある通り、書は可能な限り多くの人に手に取ってもらうことをおのずから欲す、逆に言えばそういう本こそが後世に語り継がれると思う。そのためには文章を超えた「意味」だけが重要なのではなく(本がまだ一般の人から縁遠かった時代の流通やら、本の形態やらは別としても)、作者の意を十二分に伝えられるような構成、文体であるかどうか、視覚的に理解を助けられるかどうか(レイアウト、って従来軽視されがちだったけど、2言語間を行き来する外国語の学習においては極めて重要だと思う)、故意に衒学ぶっていないか、など考慮する点は沢山ある。それらが満たされて多くの人が「字面を理解」し、その中の幾人かが「本に教えられる」ことが可能になると思う。そもそもその本を手に取る、と手に取って字面を理解できないのなら、それでは人を感化することが出来ないのだから。

コメント

tyler
2014年2月12日19:38

It darkles, (tinct, tint) all this our funnaminal world.なんて一文も日本語にはないリズムと含意がありますね。

ヤバイは、昨今のコミュニケーションにおいて詳細さや正確さよりも速さに重きが置かれるから生まれたのでしょうね。日本人はいつの世代もおもしろ略語を生み出してますし、面白いですな。本来否定の形容詞“やばい”は現在のような肯定を含む意味が第一義になるやもしれませんね。

マイコロス
2014年2月13日14:48

ヒュー!流石にタイラー兄貴やでえ!

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