ジャンゴ 繋がれざる者 鑑賞
粗筋

奴隷制度をめぐる対立が色濃くなる1859年アメリカ南部。賞金稼ぎのキング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)と出会い、奴隷を繋ぎとめる鎖から解放されたジャンゴ(ジェイミー・フォックス)。ジャンゴはキングとともに南部の指名手配犯を捕まえながら鍛錬を積み、奴隷市場で生き別れとなった妻のブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)を探していた。そのブルームヒルダは、カルヴィン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)が営むキャンディランドという農園にいた。カルヴィンは奴隷を鍛えあげ、奴隷同士を闘わせては楽しんでいる。ジャンゴは妻を救うため、極悪人カルヴィンに生死を賭けて立ち向かう。

感想
いやーーーーー素晴らしい!!!!今年入って最高の映画だよ!!!タランティーノさん流石です!!

ストーリーは序盤は賞金稼ぎとしてシュルツとジャンゴの旅が描かれる。奴隷の身から解放されたジャンゴはシュルツの下で銃の腕を磨き、また賞金稼ぎとしての心得を学ぶ。
中盤はカルヴィン邸への2人の潜入が描かれる。そして終盤、カルヴィンの横柄な態度に立腹したシュルツが彼を銃殺、しかし彼もまた殺され、ジャンゴは捕まって再び奴隷の身となってしまう。しかしそこで彼は機転を利かせ…。さてここから実際に劇場に行って確かめてほしい。

タランティーノは会話のセンスが良いね。口上を上げる時は非常にテンポよく、立て板に水を流すような口ぶり。お蔭でアクションシーン以外でも飽きることがない。加えて絶妙な伏線や小ネタを交えるのが上手い。
終盤の「また会おう(ドイツ語)」や、奴隷として再び捕まった後で取り調べをする白人たちに微妙に嘘をついて乗り切る辺りは、見ていて「上手いなーこの論点のずらし方」と感心してしまう出来。ここは是非見て確認してほしい。

銃撃シーンは流石の残酷さ。この弾が当たれば肉が弾け、血が噴き出すようなグロさっていうのは最近の映画ではもうスプラッターホラーぐらいにしかないねえ。しかし只グロテスクさを見せつけるのではなくて、爽快な音楽も相まって非常に見ていてスカッとする仕上がりになっている。

それと今作では黒人問題、についても多少は興味深いものもあったかな。南北戦争の前なので奴隷制が公然としてあった時代。南部の大豪邸の場面では多数の黒人奴隷の働く姿があったが、彼らの全てが「綿花のプランテーションで働く薄汚れたニガー」ではなかった。彼らの中にも頭が良い者や見目の良い者は邸内での仕事の従事し、中でも優秀な者は使用人頭として農園の地位で言っても上位といっても良い位に就く者さえ居た。それが今作でサミュエルLジャクソンが演じたジョンだろう。このような本来下層の地位の者が中位層になることもあったことが、差別問題をより複雑にしているところだろう。こういった階級の疑似的な移動はイギリスのガバネス(上流階級の子弟専属の教師)にも同じようなことが言えるのではないだろうか。貴族になることは出来ないが、貴族の近いような待遇の内、彼らに対して親近感を持ち、軽蔑感どころか尊敬の念すら持つようになる。作品内でカルヴィンが「どうして黒人共は主人を殺さないんだろう?」と疑問を持っていた。彼は黒人の脳が奴隷的性向を持っているから、と思っていたが、私には違うように思う。それは最後、ジャンゴが屋敷を襲撃した際黒人の召使いたちに「黒人は逃げろ」と言ったが、皆解放された喜びではなく、ジャンゴに対して恐怖と嫌悪の表情を向けていたことからも分かるだろう。

少し小難しいような話になったが、本作は純然たるエンターテイメントである。血沸き肉躍るマカロニウェスタンの世界にようこそ。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索