アシュラ 鑑賞

2012年9月30日 趣味
アシュラ 鑑賞
30本目。

粗筋

1400年代半ば、洪水や干ばつによって飢饉となり、人々は餓え苦しんでいた。ある女性が赤ん坊を産み落とすが、空腹のあまり赤ん坊を食べようと牙をむく。その赤ん坊はなんとか生き残るが、言葉も知らず名前もないまま、人を襲って人肉を食い、野獣のように生きていた。彼はある旅の法師と出会い、アシュラと名付けられた。アシュラは、初めて自分に優しくしてくれる若狭という少女と出会い、人間らしい感情を知るようになるが…。


感想
まさに異形。原作が発禁問題になったのも頷ける。
食人か死か、という倫理と生存の問題を扱ったアニメ作品。

映像面で言えば非常に挑戦的なつくりをしている。
右上辺りの画像を見て貰えれば分かると思うけど、まあ最近のアニメでこんな色合い、キャラデザの作品ってないよね。
http://www.nicovideo.jp/watch/1348232759
とにかく実際の映像で見てもらうほかないんだけど、応仁の乱で荒廃し、日照り天災で枯れ切った土地と人の心の荒み様をこれでもかと表現している。苔色泥色で塗りつぶされた前半、若狭とアシュラとの心の通い用を盛夏の翠と澄んだ水の色で描いた中盤、そしてアシュラを狩るために手に手に松明を持ち山狩りをする時の地獄のような火の色と昏黒の夜空で彩られた終盤。水彩画をCGで動かす、という特殊技術で画面は動かされ、アクションシーンではCG処理で刃物の動き、ちしぶきが表現されている。
声優の演技で言えばアシュラ=野沢大先生と若狭=林原めぐみの対比が特徴的だね。野沢さんは喉の奥から搾り取るような呻き声(勿論褒め言葉)、感情を全面に出した演技が有名。対して林原さんは作り物めいているというか、無表情さ、崇高さを感じさせる演技を出来る稀有な声優さん。この映画のテーマとして動物のように醜く生きるか、人間として倫理的に死ぬか、という二律背反がある。それをこの2人にキャスティングした、っていうのは制作陣の器量の良さを感じさせるね。実に良い味に仕上がっている。特に前半、動物のように4つ足で生き(4つ足、という呼び方が被差別部落民に対する蔑称だったことも意識されているのか?)言葉も知らなかったアシュラの「声」(むしろ呻き声、唸り声といってもいいか)を「言葉」なしに感情を表現した野沢さんの力量に感服。

万人受けはしないだろうね。ただ今年見た新作映画の中では文句なしに最も素晴らしい映画でした。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索