新海誠最新作『星を追う子ども』視聴。ストーリーやキャラクターはそれなりなんだけど…胸に迫るものがない、そんな映画でした。

長いしストーリーの起伏は中々にあったので粗筋をまとめると、死者を蘇らせることの出来る地下の国で旅をする映画です。
新海印の美しい背景に加え、今回は重力を感じさせる戦闘、キャラクターたちの疾駆などもあり、見ごたえはありました。

ただテーマの「死と生は別個であり、生者は死の喪失を受け入れて生きていくしかない」という考えがいまいち伝わってきませんでした。
氏の前作『秒速~』は人物の心情と情景が完全に融合した、言葉を介さずに青春の残照の物悲しさ、幼き日への憧れがひしひしと伝わってくるまさに傑作と呼ぶに値する作品でした。
しかし今作は主題を主に登場人物たちに意識的に語らせており、それが「白け」を呼んだのに加えて完全に首尾一貫していたとは云えない部分があり、心に強い印象が残りませんでした。

主人公の「先生って…お父さんみたい」の呟き
シンの「生きている者が一番大事だ!」という言葉
そして最終幕、死んだ妻の魂を呼び寄せたもののまた黄泉へと還っていってしまうシーンでの先生の「君を愛している!君を愛してい『た』!」の叫び

これらの高まりを経験しながら、先生は結局地下世界に残り、主人公と分かれる、というシーンは頂けませんでした。わざわざ愛していた、という過去を過去として見据える言葉を使ったのなら、仮令主人公の母親と結婚するなどという強引な方法でなくとも良い、ただ主人公の側に居て、死んだ者への異性愛ではない、生者への別の愛の形を示して欲しかった。
その台詞が魂の言葉であったのなら。

~~~~~
MTG引退すると云いましたが、面接来週からなので今週末の発売記念は出ます。
明日の日記は新環境デッキ予想。

~~~~~
読んだ本
10 Racism Ali Rattansi OXFORD
教科書。人種差別の歴史、そして古くは生物的な差異から始まった差別が文化的な様相を取り入れながら複雑化していった経緯を辿る。
差別に正当な理由はないけどさ、いずれにせよ理由はあると思うんだよね。だから終わらない。

11 異形の王権 網野善彦 平凡社
中世日本、婆娑羅の風を起こしつつ聖から俗への変化を遂げて行った「異類異形」の者たち。その背後には天皇でありながら異形の力を動員し政変を巻き起こした、御醍醐天皇の姿があった。
装束、持ち物、所作、集団行動について一見関連性がないように見せかけながら全て御醍醐天皇に繋がるっていう構図が好き。学術書でカタルシスを覚えたのは久しぶり。

12月と蟹 道夫秀介 文芸春秋
直木賞受賞作。
母の浮気を疑う少年と、母の死の悲しみを捨てられぬ娘。家庭不和を抱える友達。終わらない日常に厭いた彼らは、神様を作り出した。
リアルな漁村風景と、瑞々しい少年の感性が肌で感じられる作品。

13 デミアン ヘルマンヘッセ実吉捷郎訳 岩波文庫
キリストと家族の聖の面と、使用人や下町の猥雑さの俗の面。両者の間で悩むジンクレエルが出会ったのは、そのどちらにも染まらぬ、不思議な才智を感じさせる少年のデミアンであった。
戦争の中にあったドイツの若者の心を動かした名作。

14 折口信夫文芸論集 折口信夫 講談社学術文庫
日本の宗教を眺める学者でありながら、また優れた文学者でもあった氏による一流の随筆集。

15 魔道書ネクロノミコン コリンウィルソン序文 ジョージヘイ編 大瀧啓裕訳 学研ホラーノベル

Song of my soul, my voice is dead,
Die though, unsung, as tears unshed
Shall dry and die in
Lost Carcosa
ああ!印が!印が!


コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索