読みにくい漫画、読みやすい漫画 それと秘密にビンラディンについて
2011年5月3日 趣味 いつも通り一人善がりなお話。
谷崎潤一郎の『文章読本』という随筆集の中で、ごつごつしていて、一見悪文に見える文章も、却ってその読み辛さの中で読後力強い印象が残る、という下りがあります。
このことを漫画においても何度か感じたことがあったので2点ほど述べて行こうと思います。
単純な絵の上手さや、ストーリー展開以外に、漫画の読みやすさを決める要因として自分は「視点移動のし易さ」と「読むテンポの緩急」の2点があると思います。
視点移動なんかは大昔の漫画入門の本などにもあるように、1ページの中でコマ割りやコマとコマの間の吹きだしの置き方などで、右上から左下にかけてなだらかにカーブを繰り返していくのが理想だと言われています。
更に付け加えればコマ毎の視点が引き寄せられる部分などもそれに関係してきて、強弱がついていればその強調された部分を目は自然に追っていくため、その配置によっても読みやすさは変わってきます。
読むテンポは、もっと分かりやすく云えば如何に解説やセリフが多いか、またその頻度はどれくらいかということ。デスノート(最早死語か?)は極端に読むペースが遅く、ナルトやブリーチはその反対ですね。
冒頭の引用の通り、読み辛い漫画の中にも、面白い漫画というのは存在します。
その例として『ケルベロス』と『闇金ウシジマくん』を挙げます。
『ケルベロス』はチャンピオン連載のアクション伝奇漫画で、自身の力に立脚しない、自分の元からの正義感や意思による覚悟を背負った主人公が戦う話であり、そこらが軟派なジャンプ連とは一線を画す漫画なのですがこの漫画は非常に読み辛い。
戦闘自体は肉弾戦が殆どで構図などにも問題は無いのですが、単なる「音節としての吹きだし」が非常に少ないのでアクション漫画ながらに読むテンポが削がれる感じがします。
「うおおおおおおおおおお!!!」や「痛い痛い痛い痛い痛い」などの言葉は吹きだしが大きかったとしても意味は「叫び」と「悲鳴」です。なので目で捉えても意味解釈をほとんどしない。
しかしこの『ケルベロス』の場合は戦闘中のセリフでも場面の状況説明(主人公と行動を共にする「雪房」という名前の狂言回し役の怪物の場合が多い)や心境吐露などに具体的な単語を織り交ぜさせているので、一々読む目がセリフのところで減速させられてしまう。
しかしそれによって却って主人公の人となりといいますか、古臭いヒーローのような人間性が、馬鹿な雄叫びばかり挙げるジャンプヒーロー達よりも明確に伝わってきます。この主人公への愛着のようなものが、『ケルベロス』の大きな魅力であると考えてます。
『ウシジマくん』は有名だから説明良いですよね?あの漫画、街金系、アングラ系漫画なのに異様な迄に説明描写が少ない、それに効果線がなく、背景も白抜きされていて、とても淡々としている。加えて話のペースが余り変化しない。
淡泊で味気ない表現なのに、肝心の中身は間違いなく異常で、金に目が眩んで身を滅ぼしていく人間の様を只管書き続けている。
カイジのように心境をコマ全体で表現するのではなく、飽く迄その行動の中で感情が表現される。作品を通じての誇張のなさがこの漫画のリアリティに結実していると思う。
その逆で読みやすい漫画とは。間違いなく『ハンターハンター』を挙げますね。
幽白でアクションを書き続けてきただけあってアクションシーンの視点移動のさせ方に文句は無いし、読むテンポの緩急に関係した話として、富樫さん設定説明とかエピソードの挿入が無茶苦茶上手いのよね。
キャラの念能力の時とかは云うに及ばず、使い捨てキャラの設定(久々にシャバの肉を掴める)や登場人物の過去(感謝の正拳突き)、作品世界内のオリジナル物のリアリティ(グンギとか)が兎に角秀逸で、飽きない。特にそういうのが戦闘中に挟まれたりしてアクセントになってるのが実に憎いね。
ハンターハンターは連載中のジャンプ作品でまぎれも無く最高の作品なんだから富樫先生は仕事をするべき。
以上結論。
谷崎潤一郎の『文章読本』という随筆集の中で、ごつごつしていて、一見悪文に見える文章も、却ってその読み辛さの中で読後力強い印象が残る、という下りがあります。
このことを漫画においても何度か感じたことがあったので2点ほど述べて行こうと思います。
単純な絵の上手さや、ストーリー展開以外に、漫画の読みやすさを決める要因として自分は「視点移動のし易さ」と「読むテンポの緩急」の2点があると思います。
視点移動なんかは大昔の漫画入門の本などにもあるように、1ページの中でコマ割りやコマとコマの間の吹きだしの置き方などで、右上から左下にかけてなだらかにカーブを繰り返していくのが理想だと言われています。
更に付け加えればコマ毎の視点が引き寄せられる部分などもそれに関係してきて、強弱がついていればその強調された部分を目は自然に追っていくため、その配置によっても読みやすさは変わってきます。
読むテンポは、もっと分かりやすく云えば如何に解説やセリフが多いか、またその頻度はどれくらいかということ。デスノート(最早死語か?)は極端に読むペースが遅く、ナルトやブリーチはその反対ですね。
冒頭の引用の通り、読み辛い漫画の中にも、面白い漫画というのは存在します。
その例として『ケルベロス』と『闇金ウシジマくん』を挙げます。
『ケルベロス』はチャンピオン連載のアクション伝奇漫画で、自身の力に立脚しない、自分の元からの正義感や意思による覚悟を背負った主人公が戦う話であり、そこらが軟派なジャンプ連とは一線を画す漫画なのですがこの漫画は非常に読み辛い。
戦闘自体は肉弾戦が殆どで構図などにも問題は無いのですが、単なる「音節としての吹きだし」が非常に少ないのでアクション漫画ながらに読むテンポが削がれる感じがします。
「うおおおおおおおおおお!!!」や「痛い痛い痛い痛い痛い」などの言葉は吹きだしが大きかったとしても意味は「叫び」と「悲鳴」です。なので目で捉えても意味解釈をほとんどしない。
しかしこの『ケルベロス』の場合は戦闘中のセリフでも場面の状況説明(主人公と行動を共にする「雪房」という名前の狂言回し役の怪物の場合が多い)や心境吐露などに具体的な単語を織り交ぜさせているので、一々読む目がセリフのところで減速させられてしまう。
しかしそれによって却って主人公の人となりといいますか、古臭いヒーローのような人間性が、馬鹿な雄叫びばかり挙げるジャンプヒーロー達よりも明確に伝わってきます。この主人公への愛着のようなものが、『ケルベロス』の大きな魅力であると考えてます。
『ウシジマくん』は有名だから説明良いですよね?あの漫画、街金系、アングラ系漫画なのに異様な迄に説明描写が少ない、それに効果線がなく、背景も白抜きされていて、とても淡々としている。加えて話のペースが余り変化しない。
淡泊で味気ない表現なのに、肝心の中身は間違いなく異常で、金に目が眩んで身を滅ぼしていく人間の様を只管書き続けている。
カイジのように心境をコマ全体で表現するのではなく、飽く迄その行動の中で感情が表現される。作品を通じての誇張のなさがこの漫画のリアリティに結実していると思う。
その逆で読みやすい漫画とは。間違いなく『ハンターハンター』を挙げますね。
幽白でアクションを書き続けてきただけあってアクションシーンの視点移動のさせ方に文句は無いし、読むテンポの緩急に関係した話として、富樫さん設定説明とかエピソードの挿入が無茶苦茶上手いのよね。
キャラの念能力の時とかは云うに及ばず、使い捨てキャラの設定(久々にシャバの肉を掴める)や登場人物の過去(感謝の正拳突き)、作品世界内のオリジナル物のリアリティ(グンギとか)が兎に角秀逸で、飽きない。特にそういうのが戦闘中に挟まれたりしてアクセントになってるのが実に憎いね。
ハンターハンターは連載中のジャンプ作品でまぎれも無く最高の作品なんだから富樫先生は仕事をするべき。
以上結論。
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